設計や建築大きな影響をもたらしている「構造模型」は、精密で細かい物をイメージする方も多いと思います。
現代ではコンピューター上で図面を立体化してCG模型を作るという手法もありますが、今回はバーチャルではなくリアルでの模型に焦点を絞ってご紹介したいと思います。

 

 

~模型を作る意味~

ではまず、模型を作るその意義とは何でしょうか?
「建築を考え設計する事とジオラマのような綺麗な模型を作る事は全く違う技能ではないのか」「そもそもそれは設計において必ずしも必要な物なのか?」など、そういった声はよく見掛けます。
そんな中でも模型を作る意味は、大きく分けて3つあります。

 

 

1.イメージの共有

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建築物はその特性上、他の工業製品のように1/1サイズのモックアップを作る事が出来ないので「建ててみないと分からない」という難しさがあります。だからこそチーム内や施主様を含め、設計者以外もそのイメージを共有出来るように模型を作る事が大事になるのです。
図面を読むには建築についての専門知識が必要となってしまいますが、模型であれば専門知識がなくとも万人がその建築を理解し想像することが出来ます。
図面だけで終わるのではなく模型を作る事でそこにどんな暮らしが実現するのか、直感的かつ具体的にイメージを広げていく事ができ、施主様と設計者の架け橋としてコミュニケーションを円滑に進めてくれる存在になります。

 

 

2.イメージを具現化して再考するpixta_59005691_S

いくら建築に精通した設計者であっても頭の中で考えたイメージと具現化した建築の形がぴったり一致するという事は中々ありません。形にしてみて初めて気付く事があり、考えていたイメージとのギャップがあらわになったり、実現させたかった効果が実際には上手く機能していなかったりと様々な事を教えてくれる物が建築模型です。模型を作るというのは手間がかかる様に思われますが、ある程度設計が進むごとに模型を作ってみて客観的に建築と向き合う事で、結果的により良い「建築を生み出す近道となるのです。

 

 

3.デザインを考える道具

その他にも、建築模型だからこそ出来るという事があります。それは”試しに壊してみる"という事です。
模型を作ってみたうえで壊せるという事は、後から部屋の位置をずらしてみたり、離れさせてみたり、屋根の向きを変えたりと、前とは全く違う建築をするのを色々試せるという事です。
このように実際に模型に触れて手を動かしてから考えてみる事で、より良いデザインの発想の手掛かりがみつかったり、紙に書いていただけでは思いつかなかった案に辿り着いたりするのです。

 

 

・模型を作る過程

ではそんな模型はどのように作られるのでしょうか?勿論一言で模型と言っても、材料や目的によって様々な作り方があります。
今回はオーソドックスな方法の流れをご紹介します。模型を見る際に作られた過程を考えるとより面白くなるかもしれません。

 

 

1.図面を書くpixta_23017310_S

当たり前ですが、設計が無いと模型を作る事は出来ません。設計を分かりやすく書き示した物、それが図面です。図面の寸法を基に模型を作る事になるので、まずは画面を完成させる必要があります。どんなに設計の初期段階であってもとりあえず図面を書いて模型を作ってみる、そんな作業うぃ行う事が設計において大事になってきます。

 

2.材料を切る

図面通りに部材パーツを切り出していくのですが、この際に板厚や縮尺を間違いやすいので注意しながら進めていきます。骨格となるのは主にスチレンボードと呼ばれる発泡素材の白い板なのですが、実際の建築の仕上がりイメージに合わせて色紙を貼ったり絵具を塗ったりとテクスチャ(表面の質感)を加えていきます。このテクスチャによって模型及び建築物が人に与えるイメージや感覚は大きく異なってくるため素材選びにこだわり、よりイメージに近い物、伝わりやすい物になるように工夫していきます。

 

3.組み立てるpixta_81433769_Spixta_81433769_S

前段階で切った部材パーツをくみ上げていきます。順番に気を付けてパーツを乗りで接着します。この際に糊が接着面からはみ出ない様に気を付けなければならず、最も模型の仕上がりを左右する工程ともいえます。ピンセットや爪楊枝を使いながら慎重に進めていきます。因みにこの接着時には模型製作用の協力で速乾性の高い専門の糊を使います。

 

4,添景を入れる

添景とは「添景模型」の事です。その名の通り景色を添える為の模型で、実際の暮らしをイメージする際に家の模型だけでは足りない部分があるので、この模型もかなり重要度が高い物です。ベッドやテーブル、椅子の模型を置いて初めて人間は大きさの感覚や高さの感覚を想像することができ、生活をイメージ出来るようになるのです。
添景を入れる事で模型は一気に生き生きとし始め、生活の様子がありありと分かる様になっていきます。もちろん添景模型を作る事は最も細かく繊細な作業になるのですが、イメージを伝える為の最後の工程として工夫を懲らします。

 

 

このように様々な目的の為に手間と時間を掛けて作り上げる模型は、その大きさは小さくとも最終的に出来上がる大きな建築物の為、絶対に欠かせない要素と言えるのです。