地中海の小さな町から、こんにちは。
ガイアフィールドの、一番遠隔地からのリモート社員・森口と申します。
こちらのブログで、既にメルマガで書かせてもらった題材を少し掘り下げ書かせていただける事になりました。
日本そして関東近郊の住宅事情やリフォーム、建築・不動産関連の周辺情報はもちろん、欧州の不動産事情やトレンド
なども交えた、ガイアフィールドそして【ガイア通信】ならではのオリジナルな情報をお届けします。
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す。
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墓石まで使って外壁工事?!
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さて、こちらに住んでいると、日本では考えられないような「不思議な」経験やびっくりすることが多々あったりします。
その中でも、ヨーロッパの建築事情に関して個人的に面白かったエピソードとして、こちらで今回シェアしたいと思います
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<今回は、地中海に面した小さな町のおはなし>
現在私が住んでいる場所は、南欧と呼ばれているスペインの地中海沿岸にある小さな町です。
スペインで地中海沿岸沿いにある町として有名なのは、ガウディ建築で有名な大都市バルセロナや歴史的情緒あるバ
レンシア、世界的にも夏のバカンス地として有名なアリカンテに、ダリの愛した小さな宝石カダケシュ…など枚挙にいとま
がないですが、実はローマ帝国の植民地時代に繫栄した中心都市がありました。
タラゴナ(Tarragona)と呼ばれる街があるのをご存じでしょうか?
位置的には、バルセロナとバレンシアの中間地点ぐらいにあります。今は中都市程度の街なのですが、現在も州都でも
あり今もたくさんのローマ遺跡が残る、のどかな街です。
ローマの植民地時代、この町はタラコ(Tarraco)と呼ばれ、ローマ帝国のスペイン(当時はヒスパニアHispania)最重要拠
点でもありました。そのため、この町ではどこを掘ってもローマ遺跡が出土します。
そして、古いものの歴史的価値を保存しながらの新規開発という、古い都市ならではの悩みと葛藤と長年戦ってきた街
でもあります。
さて、前回もお話ししたように、ヨーロッパの建築の基本は「レンガ」や「石」が昔からメインとなっています。
旧市街地を歩いている時、昔からの建造物が積み重なってきた層を掘って、現代の上水道や下水、そして電気や電話
線などの各種ケーブルを吊り下げたり埋め込んだり…と過去から現在まで様々な苦労をしてきた様子が、小さな工事現
場や各種の建築現場の端々からでも感じられます。


<街並みの何気ない壁も、ちょっと削るとローマ時代のものだったり>
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いいアイディアだな、と思ったのは、新しいマンションを建てる際にやはり下からローマ時代の遺構が発掘されたのです
が、その遺構の一部をガラス張りにして道行く人にも見えるように保存しつつ、上に近代的なマンションを建築していた
例です。歴史的建造物の保存、となると学術的な面や経済的な面で衝突することが多いと思いますが、こういう匙加減
が古い都市なりの工夫や抜け道だったりするのかな?と勝手に感動していました。
この町には、商店やレストラン、ショッピングモールの中にもそういった場所がたびたび見ることができるので、そういっ
た箇所をめぐるツアーなんかもあると面白そうだなと思いました。
実は一度、興味が出てこの町の歴史ツアーに参加したことがありました。
現地の観光ガイドさんの説明が大変興味深いもので、参加してよかったと思えるものでした。何より、背景や歴史などの
話を通して、歴史あるものなんだな~と安易に見過ごしてしまいそうな建築物にも、違った印象を持つことができました。
ローマの植民地時代、多くのローマ人がイタリアからやって来て、ローマ風の街を建築していきました。当時の文明最先
端の、素晴らしく美しい技術でしたが、ローマ帝国が撤退した後では、当時のスペイン人にとってそれらはやはり「侵略
のあかし」でしかなかったようです。
そういった心情からか、その後も街として残っていく中でローマ時代の建造物を改築したり取り壊したり、遺構の上に新
たに作ったり…という事がほぼローマ時代の遺跡全体に見られるようです。
有名なのは、タラゴナに残るコロッセオ(闘技場)の跡地に教会を建てた痕跡が残っていることでしょうか。今は史跡保存
という形で発掘されてコロッセオの形で見るとができますが、中心部にはローマ時代後にコロッセオの石材で建てられた
とされる教会の跡も一緒に保存されています。
更に旧市街を歩いていると、建物の壁に見慣れない模様?があったので聞いてみると、なんとそれは「ローマ時代の墓
石を再利用したものらしい(!?)」という事でした。


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<手前の文字が書かれている部分が、昔の墓石だったらしい>

そのほかにも、壁に埋まっているような模様はやはりローマの建築物(屋根の素材?)から調達して再利用したらしいも
のもよく見ると見つけることができました。当時の人は多分「もう侵略者のローマ人はここにいないのだから、彼らが置い
ていったものは全部利用しよう!」という感じだったのかもしれませんが、なんだかその当時の人々の気持ちまで伝わっ
てきそうでした。
そういえば、現在は段差状になっているエジプトのピラミッドも、本来の姿はつるっとした表面だったのをご存じでしたか
?後日エジプトに入植して定住した別宗教の人たちが表面の石を街づくりのために切り出してしまったために、現状のよ
うな階段状の形になったんだそうです。後世でどんなに貴重なものだと評価されていても、当時の人にとっては単なる「
過去の建築資材の再利用」だったのですね。
・・・もちろん、近代以降では古代の墓石などのそのような再利用は行われていないと聞き、安心しました。(笑)
こういった経験から、たった一つ別の視点が加わるだけで、ただ古いだけと思っていた何気ない建物や壁にも、いろんな
ストーリーが潜んでいるような気がしてきて楽しくなりました。そのため、今も建築現場などを見るとついついワクワクして
してしまいます。(撮りためた写真もたくさんあるので、こちらで今後ご披露させていただくと思います。)
もし旅行などに出る際には、少しだけこうした別の視点を予習したりしてみるのも楽しいと思うのです。今までと違って見
過ごしていたものを、新たに発見することができるかもしれません。私も、以後は旅行などに出る際にはちょっとだけ予
習をして行くことが増えました。ちょっと視点が変わっただけで、新しい出会いや発見のきっかけになっているのを実感し
ています。
今回のエピソードが、皆様の日頃の生活の中で「別の視点を生む」きっかけになれたら嬉しいです。
今後も、このように日本と違う面白そうな建築事情や建築現場のことを含め、様々な不動産や建築にかかわる情報をこ
ちらの「ガイア通信ブログ」と「ガイア通信(メルマガ)」で引き続きレポートさせていただく予定です。
次回は、日本の、特に関東圏での不動産事情に関しても一経験者として情報をシェアしていければと思っております。
こちらのブログでは、今後写真なども多めに載せていきますので、ご興味がありましたら引き続きお立ち寄りください。
またメルマガとブログでお会いできればうれしいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。