相続は誰にでもいずれ起こり得る大きなイベントです。相続により正しく親族の資産を引き継ぐことができれば経済的に助かる方もいるでしょうし、逆に相続が上手くいかなかったことで経済的にだけではなく、親族間の仲違いが起こることもあります。

そこで被相続人が遺す遺言は、相続先を決めるのにどれほどの効果を持つのかを見ていきましょう。

 

遺言の8つの効力

遺言には、「相続分の指定」「相続人の廃除」「遺産分割方法の指定及び分割禁止」などの効力があります。

 

遺言における効力を理解しておくことは重要です。効力について十分に理解していないと、適切な遺言書の作成や相続手続きが難しくなる可能性があります。

 

そこでまず、遺言の8つの効力について詳しく見ていきましょう。

 

相続分の指定

遺言により、不動産や現金などの遺産の取り分を決めることができます。民法によって法定相続分が定められていますが、遺言により取り分を変更することができます。

 

例えば、配偶者と子どもがいる場合、配偶者の法定相続分は遺産の1/2ですが、遺言により1/4とすることも可能です。

 

ただし、相続人の遺留分(この場合、配偶者と子どもの遺留分は1/4)については守られます。

 

※遺留分…最低限保証された相続財産留保分

 

相続人の廃除

相続人が被相続人(亡くなった方)に対して、重大な侮辱、虐待、脅迫、非行などを行っている場合は、遺言によってその相続人の相続権がなくなります。

 

遺産分割方法の指定及び分割禁止

遺言によって、遺産分割方法を指定することができます(民法第908条)。

 

例えば、「不動産は長男に相続して、預貯金は長女に相続する」「不動産を売却して、売却代金を長女と次女で1/2ずつ相続する」などの指定が可能です。

 

遺産の分割方法の決定を第三者に委託することもできます。

 

さらに、相続が開始してから5年以内の場合は、遺産の分割を禁止することもできます。

 

相続財産の処分

遺言により、法定相続人以外の人に財産を渡すことが可能です。

 

例えば、内縁の妻、孫、知人、団体などに不動産や預貯金を渡すことができます(遺贈)。

 

ただし、相続人の遺留分について守られます。

 

子どもの認知

遺言によって、子どもの認知が可能です。

 

婚姻していない女性(内縁の妻)との間に子どもがいる場合、遺言書によって子どもを認知し、不動産などの財産を相続させることが可能です。

 

たとえ生前に認知されていなかった場合でも、死後に遺言によって認知することができます。

 

認知されていない場合、子どもは法定相続人ではありませんが、認知により法定相続人となり、一定の財産を相続する権利が与えられます。

 

後見人の指定

遺言書によって、未成年後見人の指定が可能です。

 

未成年後見人とは、親権者が死亡などでいなくなった場合に、財産管理や身上監護を行う人のことです。

 

未成年の子どもがいる場合は、遺言で第三者を子どもの未成年後見人として指定可能です。

 

遺言執行者の指定・指定の委託

 

遺言により、遺言執行者(遺言の内容を実行する人)を指定することができます。

 

遺言執行者は、マンションや一戸建ての相続登記や預貯金の名義変更などの手続きを行います。

また、遺言執行者を指名することを第三者に委任することも可能です。

 

生命保険金の受取人の変更

遺言書によって、生命保険金の受取人を変更することができます。

 

通常、生命保険金の受取人を変更するには、被保険者と生命保険会社の同意を得て契約を変更する手続きが必要です。しかし、遺言によって保険金受取人を変更することも可能です。

 

ただし、遺言で保険金受取人を変更する場合は、元の(変更前)の受取人に対して生命保険金が支払われた後に、遺言による受取人変更の通知を行っても、保険金が支払われない場合があるため注意してください。

 

遺言の効力が及ばないこと

 

「相続人の遺留分は侵害できない」「養子縁組、離婚、結婚に関することは効力は発生しない」といった、遺言の効力が及ばない事柄について、被相続人と相続人の両方が理解しておくことが重要です。

遺言の効力が及ばないことを理解しておくことは、相続トラブルなどのリスク回避にもつながります。

 

ここでは、遺言の効力が及ばない事柄について確認していきましょう。

 

相続人の遺留分は侵害できない

遺言であっても、相続人の遺留分は侵害できないため注意が必要です。遺留分とは、最低限保証された相続財産留保分のことです。

 

たとえ遺言で相続分の指定や相続財産の処分を行ったとしても、遺留分は守られます。

 

配偶者や子ども、父母などの法定相続人は、財産を最低限受け取る権利があります。

 

なお、遺留分については、法定相続割合の1/2もしくは1/3であり、以下のとおりです。

 

 

ケース①

配偶者と子ども

ケース②

配偶者のみ

ケース③

子どものみ

法定相続分

配偶者:1/2

子ども:1/2

配偶者のみ:全部

子どものみ:全部

遺留分

配偶者:1/4

子ども:1/4

配偶者のみ:1/2

子どものみ:1/2

 

養子縁組、離婚、結婚に関することは効力は発生しない

遺言によって、婚姻していない女性(内縁の妻)との間に子どもがいる場合は認知することができます。ただし、実の子どもの認知以外については、養子縁組や離婚、結婚などを遺言で指定しても効力を持ちません。

 

例えば、「◯◯との婚姻関係を解消する」「◯◯と養子縁組を結ぶ」「死後、◯◯と婚姻関係を結ぶ」といった内容を遺言書に書いたとしても、これらは効力を持たないため注意が必要です。

 

付言事項は効力がない

付言事項についても、遺言では効力を持ちません。家族への願いや感謝の気持ち、家業継承、葬儀などについて希望を書いたとしても効力は発生しないため注意してください。

 

また、臓器提供など、遺言者の遺体の処理方法について記載している場合も同様です。



遺言書を無効にしないための注意点

遺言の効力を理解していても、適切でない方法で遺言書を作成すると、遺言書が無効になる可能性があるため注意が必要です。

 

自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言など、どの作成方法を選択する場合でも、法律に従って作成して適切に保管することが重要です。訂正や加筆を行う場合も、ルールを守る必要があります。

 

遺言書が無効になる主な作成方法は、以下のとおりです。

 

・パソコンで作成されている

・押印がない

・日時がない

・署名がない

・遺言者以外の人が書いている

・作成日と日付が異なる など

※自筆証書遺言の場合

 

遺言書の作成や管理に不安がある場合は、司法書士や弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。専門家に相談や依頼することで、遺言書の適切な作成や管理ができ、相続時のトラブルリスクを軽減できます。

専門家の意見や知識を取り入れることは、相続を公平に終わらせるためにも重要です。ただしその専門家を選ぶ際には、被相続人のいずれかの個人の関係者などではなく、中立的な立場の人間を選んだほうが良いです。

まとめ

不動産の相続においては遺言は大きな効力を持ち、誰がどの程度の資産を相続できるのかを決めることが可能です。一方で相続人の遺留分に関しては、たとえ遺言と言えども遺留分を超えた相続の権利を侵害することができないことが示されています。

相続をする際には、この遺留分をしっかりと確認をしながら遺言が正当な意味を持つものなのかを見極めていきましょう。

被相続人が正しい知識を持つことで、不動産も正しく相続できるようになります。