地中海の小さな町から、こんにちは。ガイアフィールドの、一番遠隔地からのリモート社員・森口と申します。

今年も、日本・欧州の不動産事情やトレンドなども交えた、ガイアフィールドならではのオリジナルな情報をお届けします。

 

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3Dプリンターで家が!?住宅難を救う最新建築技術

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ここ数年のスペインの住宅難は深刻化を極めています。

特にマドリッドやバルセロナなどの大都市部では、賃貸物件を見つけること自体が年々難しくなってきています。

その理由としては、都市部の不動産の高騰の影響を受けた賃貸物件の値段が上昇傾向であることと、そして長期貸しの賃貸物件の数の少なさなどで、単身者はもちろん家族世帯の住宅探しが難航を極めています。

同じ状況は地方都市部にもおよんでおり、更にはリゾート地域ではさらに深刻な状況になっています。特にヨーロッパで、も有数のバケーション先であるカナリア諸島やマヨルカ島などでは、近年急激なオーバーツーリズムと不動産価格高騰により、そこで働く一般の人が住む家を見つけられず、時には野宿で補っているという事態まで起こっています。

■ スペインの深刻な住宅難は構造上の問題もある

この10年以上の間、政府や自治体もこうした不動産にまつわる問題を認識はしていましたが、これまで効果のある対策を打ち出すことができずに今に至ります。
スペインでは、「不動産に関係する深刻な問題」が現状として多数存在しています。
明らかなスペインの住宅問題としては、まず以前からお話している「仕事が遅いケースが多すぎる」という点です。これはもう国民性だけの問題ではない気がします。(苦笑)大型休暇や、何かと滞る進捗状況に、家を建てる・リフォーム工事をするといったことには施主側に本当に多くの忍耐力を求められます。実はこれによって古い物件の賃貸物件化が進まなかったり、空き家問題に発展する例も出てきています。

そして現状の大きな問題としては「住宅ローンの制度問題」があります。スペインではなぜか銀行側に優遇した制度となっており、例えば住宅ローンを組んだ後に不払いに陥った場合、物件を接収されるだけでなくローン未払い分の金額がそのまま夫妻として残っていく…という事態が起こる場合もあるそうです。この点に関しては、かなり以前から金融制度の改善をEUから求められていますが、いまだ改善の兆しは見られません。この問題によって家を持ちたいけれど持てない、そして実はこれも空き家問題の隠れた理由にも関わっています。

また、この10年以上問題となっているのが「不在時に泥棒が家に入り込んで家を占拠」されるOkupa(オクパ)という犯罪事例に対する対処が一切なされていないことです。これはスペインで物件を所有する人すべてを不安にさせている事態になっています。(ちなみに警備会社と契約しても、対処としてはまだ不安が残る現状なのだそうです。)

そして、観光立国でもあるスペインにとってさらに深刻な事態を招いているのが、個人大家による旅行者向けの短期賃貸物件の増加です。これまで普通の賃貸物件だったものが旅行者向けに変わったことで、一般の賃貸物件が減ったという説が出ています。特にバルセロナでは地元住民による「旅行者向けの短期賃貸物件に対する反対デモ」がこの十年間に何度も起こっていますが、残念ながら未だ改善の兆しは感じられていません。

 

■ スペイン住宅難の突破口はどう拓く?

・・・という、問題だらけのスペインですが(涙)、いろいろなアイディアやプロジェクトは数々挙げられています。

とにかく一般的な値段の賃貸物件が少ない…ということで、老朽化して放置されていた古いビルの改築や休閑地になっている場所を自治体で買い上げて住宅建築を、という動きがもちろん現在進行形で進められています。
こうした住宅難解消のための様々なプロジェクトが、何年もスペインの各地で行われてきました。
大学での研究プロジェクト発案などでこうした計画が次々とニュースになっていました。

タイニーハウス人気に端を発した住宅用コンテナハウスや、これまで住居用ではなかったスペースを改築した狭小住宅(これにもベットではなくFUTONというアイディアも)、そして「日本のカプセルホテル」に発想を得た小スペースの賃貸物件の計画もありました。数年ほど前に私もニュースで見てから注目していたのですが、実際にはまだ実用化されていないようです。

 

■ スペインの住宅難を救う!?3Dプリンターによる建築

<建築現場は意外にシンプル!>

さて、進捗が不安定な理由には様々なことが考えられますが、それを解消する方法として「3Dプリンター」による
建築技術が開発されました。

7mの特殊な建築用3Dプリンターにコンクリートの絞り器が接続されており、デザインしたとおりにコンクリートの層を
「まるでクリームでデコレーションしていくように」重ねて壁を作っていきます。なんとこの作業にかかる人員はたった4名!
3人の建築専門の技術者と1人のIT技術者だけで行われているんだそうです。

 

<ホイップクリームを絞ってるみたいです!スペインのニュース映像より抜粋>

スペイン・バレンシアのスタートアップ企業BeMore3D社によると、家の建築費用を現在よりも30~35%節約でき、さらに建築廃棄物はほぼゼロ、70平方メートルの家なら12時間で成形可能なんだそうです!
024年現在では、アメリカを始めイタリア・オランダ・スペイン・中国など多くの国でも既にこうした3D建築会社が起業し、国境を越えて様々な場所で既に様々なプロジェクトが進んでいるようです。

そのうちの一社である、アメリカのICON社は、南米や様々な地域で現地の素材を使った3Dプリンターによる集落の建築も手がけています。メキシコの大規模な慈善団体と組んで、低所得者層の住宅建設プロジェクトを行ったそうです。
半日で1軒のペースで建てられた家は、一日数ドルしか稼げないホームレスに近い家族へ提供されたようです。
また将来的な計画として、火星などで建物を建築する研究もNASAと共同で行っているそうです。

 

アメリカのICON社のHPより>

 

 

この3D建築の可能性は、家を早く安く建てられるというだけではなく、建築廃棄物の問題や戦争や災害などの際に、家を即座に建てられるという用途にも可能性が広がります。ただ、場所による様々な微調整は今後も研究が必要そうです。

ちなみにスペインでは、マドリッド近郊で既にこの3D建築プリンターによるアパート建築プロジェクトが既に着工されています。

調べてみたところ、実は既に日本でも3Dプリンター建築会社は発足していますが、地震や自然災害の多い日本独自の建築基準法や安全基準をクリアする必要があるため、販売的にはまだまだいろいろな工夫が必要なのだそうです。防災面などではまだ不安要素もあるかもしれませんが、こうした新しい技術がどんどん進化していくのが今後すごく楽しみですね。

今後も、欧州ならではのエピソードや欧州にかかわらず世界や日本の不動産関連・建築にかかわる情報を、ブログとメルマガで、引き続きレポートさせていただく予定です。こちらのブログでは写真など多めに載せていきますので、ご興味がありましたら是非引き続きお立ち寄りくださいませ。

 

それではまた、メルマガとブログでお会いできれば嬉しいです!

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。